2013年2月11日月曜日

マグネトロンスパッタ 続き

 
ピクルスチャンバが割れてしまったので、再びアクリルチャンバを引っ張り出して実験継続です。
マグネトロンスパッタはスパッタしたい領域だけにプラズマを集めますので、磁石を使わないスパッタに対して電流を抑えることができ、さらにプラズマを壁面から遠ざけることもできますので熱の問題は楽になる方向です。アクリルでもある程度の検討はできるでしょう。
ということで実験。

問題は
「磁石を冷却するなどといった面倒なことをせずにマグネトロンスパッタの効果だけを得るか」
です。

まず考えたのが、こんな方法。
マグネトロンスパッタは前述のように投入エネルギーは少なく出来る方向であるとはいえ、アクリルチャンバに戻したことでやはり熱が気になりますので、床面をターゲットにするのはためらわれます。ということで、まずやったのはターゲットを上にして基板を下に置き、基板側にプラズマを引っ張る方法。床面(ここでは陽極です)にスペーサーを入れて磁石を挿入できる空間を作ります。放熱は悪くなりますが止むを得ません。





動画だとこんな感じ。磁石で見事にプラズマ引っ張ってます。


磁石を動かすとこんな感じ。


プラズマのコントロールは手元で出来て簡単。かつ磁石はチャンバの外で熱くもならない。といいこと尽くめですが、結果はNGでした。非常に製膜速度が遅いです。
思うに、マグネトロンスパッタのよいところはプラズマを閉じ込めるところにありますが、閉じ込める場所は基板の近くではなくターゲット近傍でないとだめなようです。

プラズマの電子は減圧化で平均自由行程が大きくなり、チャンバのあちこちに飛んでってそこらで窒素分子を電離するからチャンバ全体にプラズマが広がるのじゃないかと思っています(これは私の勝手な推測)そして電子を磁界で束縛してある範囲にプラズマを閉じ込めるのがマグネトロンスパッタだと思っていたのですが、この結果から考えるとどうもそう単純ではなさそうです。ということで考察しました。

上の二つ目の動画を見るとわかりますが、上から吊り下げられているターゲットと磁石によって引き寄せられたプラズマの間には隙間があります。この隙間は溶液の電気二重層のように電位勾配が閉じ込められた部分であると思っているのですが、これが磁石によって引き伸ばされて勾配が小さくなってるんじゃないかと。ターゲットには窒素イオンが衝突して初めてスパッタが起きます。そしてその窒素イオンを加速するのは電極間の電位勾配ですので、勾配が小さくなるとスパッタ効率は下がるはずです。違うかな。
もちろんこれは完全にわたしの想像ですので間違っている可能性が大です。

....考えていても進まないのでとりあえず手を動かします。
ターゲットを上にするのはあきらめます。熱のことは気になりますが、やっぱり床をターゲットにすることにします。基板は上から吊るしてみました。
動画はこちら。



ここでも磁石をうごかすとプラズマが集中している部分が動いているのがわかります。このプラズマ集中部を基板の直下にもって行きます。こうすることで製膜が出来始めました。同じような速度で製膜する場合、磁石なしと比べて電圧は2/3くらい発熱も低く抑えられています。チャンバの周辺は70℃くらいまでしか上がっていません。よい感じです。
ただし、膜質はまだ良いとは言えません。更なる条件検討が必要です。

いまのところ得られている膜はこんな感じ。



厚いですが、鏡面ではありません。
プラズマとの距離、電圧条件等実験を続ける必要があります。
しかしながら、この場合もチャンバの外側から磁石をコントロールできるということで非常に安直です。この方法で何とか良い条件を探し出したいと思います。

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