2013年10月20日日曜日

さてここからです

 
いまからやりたいこと、やらないといけないことをまとめておきましょう。
  1. 冷却ジャケットをつける: 必須
    いまの構造で全力の電力投入を行うと30秒程度でレーザ管がやけどするレベルまで熱くなります。連続運転は全く無理です。
    ほぼ300Wを投入してレーザがいくらも出てないわけですから、ほぼ全てレーザ管の中で熱になっています。これでは調整どころではありません。熱による膨張ひずみも出ているはずです。冷却ジャケットをつけて水冷にする必要があります。
  2. 冷却ジャケットのアクセサリ: 気が向けば
    冷却ジャケットに通す水をどうやって確保するかは必須の検討項目ですが、最初は高低差を利用した重力落下でもいいかと思っております。ペットボトルとバケツで作るイメージ。
    ですが、最終的には落とした水を上に戻すためのポンプ、冷却水の温度センサ、高温時のアラートとレーザの自動停止、などといったアクセサリを付加したい思っております。
  3. 光取り出しミラー検討: 必須
    検討項目はいくつかあります。
    まず、構成。いまはHDDのプラッタ(アルミ板)に約2mmφの穴を中央に開けたものを使っています。これはアルミによる全反射と穴による全透過の面積比でマクロの透過率を決めているという少々荒っぽいやり方です。海外の自作レーザはほぼこの構成をとっています。が、本来であれば反射面全体がハーフミラーになっているのが理想です。そのためには10.6umの遠赤外線を透過する材料の上に半透過面を形成してやらねばなりません。問題は遠赤外線を透過する材料です。入手性を考えると現実的にはほぼZnSeかGe、そしてシリコンになるのですが、ZnSeは毒性があり、Geは非常に高価、シリコンは反射防止をしないと透過率が50%くらいしかない、といずれも難があります。もっともありそうな解は、太陽電池などで多量に流通していることで入手性の良いシリコン板に銅スパッタをしてハーフミラーを作るというものですが、これはシリコンの50%という透過率がシリコンという物質の吸収によるものではなくて表面の反射による、つまり真空との屈折率差によって「光が入っていかないから透過率が低い」ことによっているという仮説が成り立つ場合にのみ期待できる方法です。下に書いている焦電センサ窓材のことを考えるとありうる話ではないかと思うのですが、確証はありません。スペクトルを見ると10um付近に特性吸収がありますので、簡単な話にはならないだろうと思われます。
    ということで、現実的な選択として、当面いまの通り全反射面に穴を開けるという方法でいくことになると考えています。
    さて、「全反射面に穴」となると、最適な穴径はいくつなのかという疑問が出てきます。これも重要な検討項目です。
    また、簡単に「全反射面に穴」といっていますが、果たして全反射面ができているのかどうかも検証する必要があります。これはいまうまく行っていないプラッタへの銅スパッタを行うことで改善できると考えています。
    「全反射面に穴」方式をとる光取り出しミラーにかかわる最大の問題は穴に取り付ける窓材です。今回のファーストライトではポリエチレンのフィルムを使いました。これは以前読んだロシアの論文と人感センサのポリエチレンフレネルレンズからヒントを得たものですが、期待通り赤外線を取り出すことは出来たものの、真空引きによる大気圧と一部吸収されるレーザ光による熱で変形が大きいことがわかりました。もっとも大事な光取り出し部分の光路に変形した光学要素があるというのは望ましい話ではありません。しかしながら、厚く強靭にすると変形は少なくなると思いますが吸収によるロスが大きくなります。これらは材料の物理特性に根ざすものである以上、トレードオフの関係は簡単に解決できるものではありません。
    解決のためのアイデアはいくつかあります。まず一つ目の対策案は焦電センサに使われているシリコン窓を流用することです。これはすでに一部検討しています。このシリコン窓は誘電体多層膜によるコーティングがなされており、10um付近でおおよそ70%/mmの透過率を持っております。70%という値は決して大きくはありませんが、シリコンのロバスト性には魅力があります。
    二つ目の案はGe板を購入してしまうことです。光取り出し側のミラーに使えるような大きなもの(10mmφ以上)は高価ですが、窓材の数mmφであれば1万円以下で購入可能です。....あまり選択したくない方法ではありますが。
    三つ目は素直に食塩の結晶を使うことです。海外の自作家たちはほとんどそうしています。実績もある方法なのですが潮解性のある食塩の結晶というのが少し気に入りません。滑り止めというところでしょうか。
  4. 全反射ミラー構成: 必須
    これもファーストライトでは妥協しているところです。
    本来は凹面ミラーとするのが理想です。 レーザ発振の縦モードが低次のものに限定されるため集光性がよくなります。すでに凹面鏡から切り出した凹面ガラス基板は入手済みですので、これに銅スパッタを施すことで作製しようと思っております。基板の曲率が自由に選べないところが難です。100円ショップめぐりをしているのですがなかなか曲率のバリエーションがありません。
  5. レーザ管径: 気が向けば
    レーザ管径はプラズマの太さを規定し、これは直ちに出力に影響します。太いほど蓄えるエネルギーが多くなりますので良いともいえますが、管径が大きいと冷却性が一気に悪くなりますので効率低下の懸念もあります。
    いまのところパーツ類を内径8mmφまたは10mmφで集めておりますので、このどちらかを選択するくらいで済ませたいと思っております。
  6. レーザ管全体構成: いろいろ落ち着いたら
    現在の黄銅チーズを使った組みつけはやや大げさと考えています。当初はいろいろなパーツを取り替えながら検討する必要があると思ってこのような設計にしました。で実際にその通り役に立っております。が、全体の構成が決まってきたらもっと簡単な構造に切り替えたいと思っております。黄銅チーズの代わりにロウ付け用の銅チーズを使い、貫通パイプで直線性を確保しつつ構造を簡素化といったアイデアがありますが、図がないと何のことかわかりませんね。時が来たらちゃんと取り組みたいと思います。
  7. 出力測定: 必須
    精度は悪くても時定数が小さい制御用と時間はかかるけど正確な評価用の二つで考えております。前者はおそらくサーモパイルセンサを使ったもの、後者はビームを水に吸収させて温度上昇を評価するものになるでしょう。
  8. ビームプロファイル測定: 必須
    加工用にビームを制御せねばなりませんのでプロファイル測定は必須です。いまのところ感熱紙を使ったもの以外にはアイデアがありません。まずはそこからスタートです。
  9. シールレーザ: 必須
    ガスの消費、調製の手間を解決するための最も良い方法です。が、現在のフロータイプの対極にある構成であり、自作家たちもほ とんど一人も手を出していない分野です。当然非常に難しいと思いますが、やるのは自由なので検討してみようかと。完全シールは無理と思いますが、「その日 数時間使うだけの間は持つ」というバッチ方式くらいであれば手が届くかもしれません。もしこれがうまく行けばヘリウムガスを使った組成であっても怖くあり ません。
  10. ガス組成比: 必須
    現実的に一番大きな問題です。高価なヘリウムをあまり使いたくありません。ヘリウムを垂れ流しているとすぐに中華性シールレーザが買える位の出費になります。
    Sam's Laser FAQ によりますと、ヘリウムを除いた系でも効率は悪いながら発振するとの報告があります。窒素:CO2=1:1や4:1といった組成比が報告されています。と同時に「怪しい自分オリジナル組成に期待を持つべきではない」と釘を刺されてもおります。
    窒素CO2についてはほぼ安価な入手法を確立しましたので、これら二種のガスで何とか実験を続けられるよう条件を探したいと思います。
  11. ガスの自動混合系: 場合によっては
    今回の実験のように100mlのシリンジといった小規模ではなく、少なくともLスケールのガス貯まりから一定の比率でガスを引いてくる系を作る必要があるのではと予想しています。なかなか難しそうです。ちょっと考えただけでも圧力センサや小容量のフローセンサ、小型ポンプなどが要りそうな気がします。あんまりやりたくありません。
    窒素:CO2=1:1などという安直な条件でうまく行けば、対称な構造のラインを作ってなんとなく引いてやれば半々で混ざりそうな気もします。それくらいで止まって欲しいところです
  12. レーザ管圧力自動調整: フロータイプなら必須
    フロータイプのレーザでは必ず必要となるでしょう。現在使っているニードルバルブ(スピードコントローラという名前の空圧調製バルブ)をステッピングモータなどで回せるようにして、設定したガス圧を自動的に維持するためのものです。プラズマの状態を何らかの形でセンシングしてフィードバックをかけるといったことも考えてよいかもしれません。気圧センサとPICマイコンを使った系になるでしょう。
  13. 投入電力制御: いずれ
    これはいろいろなことが片付いた暁にやることです。レーザパワーを自動でコントロールします。現在はスライダックでネオントランスにかける電圧を手動調整していますが、スライダックの代わりにトライアックあたりを使った制御系を入れたいです。夢のような話ですが、木の板にレーザで写真を焼き付けるなんてこともXYステージとパワーコントロールを組み合わせれば出来るはずなのです。
  14. MOTを使った電源: 気が向けば
    ネオントランスは入手性が悪いです。それに高価。出来ればジャンクで手に入るMOTを使って電源を作りたいです。MOTは廃棄する電子レンジを分解すればタダで手に入ります。ただし、電流が取れる代わりに電圧が2kVと低いので昇圧する必要があります。コッククロフト・ウォルトン回路を使って昇圧をすればよいと思っております。面白そう。
  15. スイッチング高圧電源: 情報があればすぐにでも
    中華性のCO2レーザの電源はこの構成です。ATX電源くらいのコンパクトさで30W以上のCO2レーザをドライブしております。これは作ってみたいと思うのですが、回路に関する情報がありません。スイッチング電源の考えを高圧に当てはめればよいだけとは思うのですが、電圧が高い分いろいろとノウハウがあると思うのです。以前より探しているのですが情報がほとんどありません。見つかったら取り組みたいです。
  16. コリメート、集光光学系、XYステージ
    レーザが安定して動くようになったら加工機に向けての検討が始まります。光学系は前述の通り透過で使える材料にいろいろと問題がありますので、反射側で作っていくことになると思います。光学系について勉強しないといけません。銀のスプーンなんか使って集光できたらいかにも自作っぽくて面白いんですけどね。
    XYステージは本来難しいものですが、ここまでに書いてきたその他の課題に比べるとかわいいものに見えます。ここはすでにCNCステージと3Dプリンタキットを組んだ経験が活かせると楽観しています。
いやあ、書き出してみるとものすごい量です。全く気の遠くなるような話です。ほとんどライフワークになるかもしれませんね。自力でどこまで到達できるか楽しみです。時間がかかることもさることながら、いくらジャンク精神を発揮したとしても費用もそれなりにかかるでしょう。最近は中華レーザ管も値段が下がってきており、管だけなら送料込みでも1万円台のものを見つけることが出来ます。自作は続けながらも、おそらく買っちゃうことでしょう。
まあ、すでに自分でもわかっていることですが、レーザ加工機を作るという目的はすでにレーザを自作するための理由へと変化しております(笑 目的と手段の混合は得意技ですので気にせず行きたいと思います。

4 件のコメント:

  1. どうもはじめまして。
    動画見させていただきました、レーザー発振おめでとうございます。
    赤外ビームの可視化ですが、既にご存知かもしれませんが半導体赤外レーザー
    等で有名なhigashino氏のページがいくらか参考になるかもしれません。
    自分が覚えている感じ、赤外で蛍光を発するシートやカメラを通しての視認を
    やっていたように思います。普通のカメラでは赤外線はカットされるフィルター
    がよく入っていたりしますが、そこはネットに改造記事が良くあるので何とか
    なるかと。
    それと管の電源ですが、ブラウン管TVに使われているフライバックトランス(FBT)
    の改造が便利かと思います。小形軽量・直流出力で、放電をオーディオ変調
    したりという使われ方もされたりしています。
    簡単に動かしたい場合はzvs flyback driver等で検索すると海外で有名な回路
    が出てくると思うので一応参考までにどうぞ。
    あとFBTや駆動回路の辺まとめて書籍「アリエナイ理科の実験室/同3C」に参考になりそうな記事が載っていたりします。
    それと人づてに聞いた話なのですが、日本でも光軸に対し横方向放電励起型
    のパルスCO2レーザーを作って空中にプラズマを発生させた方も居るようです。
    余力がありましたら作ったガスを流用して試作してみても面白いかもしれません。

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  2. コメントありがとうございます。ようやく発振し始めました。一段落というところです。

    赤外線の可視化ですが、通常のSiベースのイメージセンサや蛍光シートで観察できる赤外光はいわゆる近赤外で、CO2レーザの10um域を見ることは残念ながら出来ないのです。今のところ感熱紙を使うくらいしか思いつきません。

    フライバックトランス電源についても検討をしています。
     http://mirata.blogspot.jp/2013/01/blog-post_5.html
    とか
     http://mirata.blogspot.jp/2013/05/co2.html
    あたり。
    フライバックトランスでも発振をすることは可能と思いますが、絶対出力が不足していると結論しています。フライバックトランスは電圧は高いですが、レーザ電源としては電流が少ないのです。しかしながら、入手性という点では魅力的なものでもありますので、いずれ再トライはして見たいと思っております。

    それから横方向励起というのはTEA-CO2レーザのことですかね。これもトライしてみたい世界ではありますが、いま私が持っている機材ではあまりにパワーが不足していると思っています。空中にプラズマを発生させるには相当のエネルギーが要るんじゃないでしょうか。考えたこともないので良く知りませんが、Qスイッチとかにしないといけないんじゃないかな。

    まずは現在のへなへなレーザを安定して発振させることが前提ですね。
    いつまでかかることやら...
    でも、あせらずに少しずつ進めて行きたいと思います。
    ありがとうございました。

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    1. フライバックトランスですが、実際に40Wco2レーザー管を発振させて
      木を焼いたりしたという話もあります。名前を上げた書籍の記事がそれですね。
      ただFBTは個体によって電圧と電流のどちらを取れるかという差があったり
      するので、レーザ駆動だと電流の取れるFBTをうまいこと見つける必要
      がありそうです。
      それに駆動回路によっても全然放電特性が変わってくるので、その辺
      は少しずつ情報を集めていったら良いかと思われます。
      パルス発振はco2レーザの場合割と簡単で、光学系は片面ミラーでも
      上手くすれば出来るそうです。ただ必要なのは電源の方で、高耐圧で
      瞬間的にエネルギーの取りだせるオイルコンデンサを使い、
      ストロボの様にレーザー管に一気にエネルギーを注ぎ込む感じです。

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    2. 色々ありましてお返事が遅くなりました。
      申し訳ございません。

      アリエナイ理科の実験室には続編があったのですね。知りませんでした。
      福岡県では有害図書指定(笑 を受けている見たいですが、どっかで探して読んでみましょう。
      FBTの容量はほぼ大きさによると思いますので、大きなブラウン管テレビを見つけられるかどうかでしょうね。大型ブラウン管はもうジャンクヤードでも見かけません。
      いずれ高電圧インバータを作ってみようと思い調査中です。FBT関連の話も探してみたいと思います。今はこのあたりを読んで勉強中。
      http://wiki.4hv.org/index.php/Flyback_transformer

      パルス発振&片面ミラーは窒素レーザで作ったことがあります。片面ミラーではどうしても共振器のQが稼げませんのでLASERと言うよりもASE(amplified spontaneous emission)に近くなります。加工機への応用を考える場合は一定の集光性は必要ですので両面ミラーは必須なんじゃないかなあと思っています。また、パルスでは加工が滑らかに出来ない(点線になる)と困りますので、繰り返し周波数をあげて行く事になります。こうするとだんだんとDCに近づく事になり、電源系もそれなりの物を準備する必要が出ます。結局一定の出力を取り出すには応分のパワーを投入する必要があるという単純な結論になります。
      パルス発振は確かに尖頭出力が稼げますので発振させやすく、出力も上がったように思えがちですが、エネルギー保存則の範囲内だと考えます。
      私が窒素レーザを作ったときは、ガラエポ両面基板の表裏に自動車用のイグニッションコイルの電荷を貯め、加圧ギャップ内での放電をきっかけにして全電荷を放出させるという方式でパルスを作っておりました。こうすると高価なオイルコンデンサが不要になりますので安直に作れますよ。
      でも実際に動かすとご近所中のテレビにノイズが入ると思われますので、稼動させるのは難しいんじゃないかなあ。

      情報まことにありがとうございました。

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