2015年5月9日土曜日

アルマイトのエッチング実験

 
以前にも書きましたが、このブログをご覧いただいて私にお声がけをいただく方は結構な数いらっしゃいまして、いろいろ面白い話が進んでいます。
その中でご承認をいただいたものについてはこのブログに取り上げさせていただいております。代表的な例は文月さんのミクさんのサイバーコンソールシリーズですし、近い所ではフラターテックの池上さんとの話があります。
で、そのほかにも大小6件くらいの案件がありまして、その中のひとつを進めている中でたいへん役に立つ情報をいただき、それをきっかけに面白いことを思いつきました。それが、本日の投稿タイトルであるアルマイトのエッチングであります。

アルマイト処理というのは、アルミの表面を陽極酸化して多孔質化し、その中に顔料を閉じ込めることで色をつけるという手法です。細かいことを言うといろいろあるようですが、ざっとそんなところです。
ので、アルマイト処理で着色された板の表面をレーザで焼き飛ばすと、文字や絵を書くことが出来ます。わたしも以前実験してみたことがあります。

面白い情報というのは、静岡県のとある方からのアルマイトのレーザ処理が関係する話の中でいただいた、
「アルマイトを溶解剥離させるのにはパイプフィニッシュが使える。」
というものです。

金属の酸化膜を溶かすのにそんな日用品が使えるとは思ってもいませんでした。
確かにアルミニウム、酸化アルミニウムは典型的な両性物質ですが、酸はともかく、アルカリはかなり強いものじゃないと溶けないんだろうと勝手に決めつけておりました。そんな簡単に手に入るもので表面処理が出来るのであればそれはたいへん面白いことです。
ということで、実験してみました。

使ったのはこのアルマイト板のきれっぱし。霧箱実験に使うために一部を切り出した余りです。
ケガキ線が入ってアルミ地肌が露出していますが、そこも実験時の観察対象にします。


で、パイプフィニッシュ。ダイエーで買えると言う気軽さ。しかも300円しません。
ちなみに「パイプフィニッシュ プロ」という上位品もありますが、無印のほうが結果が良いとのこと。


アルマイト板にテープを貼ります。4種類。左から、3Dプリンタでも使っているマスキングテープ、100均のセロテープ、ポリイミドテープ、ビニールテープです。
これらがパイプフィニッシュに対するマスキングになるかどうかのテストです。


近影。
パイプフィニッシュは簡単に言いますと次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合液です。ハイターなんかと定性的な組成は同じですね。


どろりとしています。これがパイプ壁面にへばりついて長く留まり、汚れを落とすらしいです。製品がなくなるまでには一度くらい本来の使い方をしてやりたいと思います(笑


で、テープを貼った板をどぶ漬け。


しばらくすると端っこからアワが。


4分。ケガキ線のところからも泡が出ているのがわかります。アルマイトはさておき、アルミがアルカリと反応すると酸のときと同様水素を発生しますので、その泡です。


泡の部分拡大。


時間の経過と共にアルマイトの部分にも泡が見え始めます。
アルマイトはアルカリと反応しても水素を発生することはありませんので、泡が出るということはアルマイト層が浮いてアルミの層にパイプフィニッシュが到達したことを示しています。


案の定、綿棒でちょっとこするとアルミ地肌が出ているのがわかります。
アルマイト層を作る酸化アルミはアルミン酸となって一部溶解し、生じたピンホールからアルカリが進入してアルミを溶解し、最終的にアルマイト層をリフトオフしている、といったことが想像される剥離の様子です。


この時点でまだ6分です。
もう十分と思われますので、引き上げて水洗いします。


十分に水洗いしたもの。
比較的強いアルカリに浸漬していたにもかかわらず、いずれのテープも剥げておりません。
これは期待が持てます。


テープ剥いだとこ。なんと、どのテープの下もアルマイトは無傷です。


すばらしい。完璧なマスクであります。これは面白いことになってきました。


拡大して詳細観察します。
これはケガキ線を入れるときにミスして二本線を引いてしまった所。注目は下の細いアルマイトが残っている所です。
この部分はマスキングテープなのですが、なんと二本のケガキ線の間の細い(0.2mmくらい)のアルマイトがきれいに残っています。この部分はどんなにがんばってもケガキ線の溝の中に微量のパイプフィニッシュが進入していたはずです。それにもかかわらずアンダーカットが生じていないのです。しかも剥げ易いマスキングテープの部分です。すばらしい。

テープでマスクした部分とアルミが露出している部分との境も注目です。これはマスキングテープですのでさすがに端っこの部分は若干ながら波打ってます。


セロテープ。まずまず。


ポリイミドテープ。さすがにきれい。


ビニールテープ。これも十分。


ということで、そのへんに転がっているテープで結構安直にマスクが出来ることがわかりました。



ということはですよ。これは非常にに面白いんじゃないですか。

たとえばですね、このようにアルマイト板をマスクして、


そのマスキングテープをレーザでパターンに焼き飛ばして、


パイプフィニッシュに浸漬してアルマイトを溶かすと、


こんなものが出来るということです。


レーザのパワーをいじったのでムラがありますが、それは本質的な話ではありません。
弱いレーザしかなくても金属の表面処理が出来るというのがポイントです。これは非常にすばらしいことです。
プロ用の安定かつ強力なレーザであれば直接アルマイト層を焼き飛ばせますので、こんな工夫をする必要はないのですが、わたしの加工機のような貧弱な環境ではきれいなものを作るための強力な手法になります。


金属表面にアルマイトでかかれたパターンですから、耐久性や耐候性という点では申し分ありません。
0.3mm、あるいはそれ以下か、と思われるような細い線もきれいに残っています。申し分のないマスク性能です。


これはさらに検討すると面白い手法になりそうです。


実は思いついたアイデアはこの先に続いているのです。
今回はエッチング後にマスキングテープを剥いでしまいましたが、これを剥がずにそのまま電解による陽極酸化を行えば、エッチングでアルミ金属の地肌を露出させた部分に再度アルマイト層を形成することが出来ると思われます。そしてその部分に染色と封印処理を行えば染色による二色画像を形成することが出来ると考えているのです。これはレーザで焼き飛ばすだけの描画手法(アルマイト着色層とアルミ地肌の二色)とは一線を画します。

しかもさらに、この手法は一度染色処理をした部分に再度施すことも可能ですので、複数回繰り返すことで多色表現をすることも原理的に可能であると考えられるのです。
レーザ描画時の位置決めや、アルマイト化処理にマスクが耐えるかなど、ちょっと考えただけでも検討項目は山積みですが、 自宅の作業台の上でそんなことが出来たら面白いと思いませんか?

アルマイト化処理自体は以前からやりたいことリストに挙げておりましたが、今回の着想でますますやってみたくなりました。
今後検討して行きたいと思います。
またToDoが増えてしまいました。時間が全く足りません.....





3 件のコメント:

  1. 初めまして♪

    フラフラとネットを徘徊していた時に見付けて同じ事をしている方がおられて
    とても興味深く読ませて頂いて以来読者になっておりましたが、凄く楽しそう
    な案件で初めてコメント残してみました♪
    (私も現在停滞中では御座いますがDCマグネトロンスパッタを長尺物でちょ
    こちょこと試しています。)

    アルマイトの多色表現は考えた事が無かったので非常に斬新ですね。
    マスクが作れればいいだけの様ですので、CNCにカッティングプロッタの刃を
    付けてと言う様な事も可能ですね♪

    巷で流行り出しているShapeokoの様なベルト駆動なら尚の事活きる案件に
    思いました。

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    1. コメントありがとうございます。
      速攻で"Factory Kiyotans"で検索してみました。スパッタの情報はどこかで公開していらっしゃるのですか?もしそうであれば是非URLを教えてくださいませ。国内にはほとんど自宅実験の情報がないもので。

      アルマイトの多色は面白そうでしょ?
      私も思いついたときに非常にエキサイトしました。が、マスク材の選定が非常に難しいと思います。陽極酸化は比較的強い酸かアルカリの中ですのでそれに耐えるものを探さないといけません。

      マスクはご指摘どおり「マスク」になってればなんでもOKです。市販のシールなんかでも大丈夫なんじゃないかと思いますね。
      切り絵を糊付けしたものでもいけるようであれば、切り絵作家さんたちの表現の幅も広がるんじゃないかと思いますね。

      今後ともどうぞよろしくお付き合いくださいませ。
      mirata.na.hibi@gmail.com

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  2. ダブルアルマイトですね、思われてるよりもう少し簡単にできますよ~
    アルマイトチャレンジの記事楽しみに待ってま~す。

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